古いスレート屋根に含まれたアスベストを除去するには、業者に依頼してリフォームをしてもらうことが大切。リフォームの方法には「葺き替え」「カバー工法」の2種類があり、自身と都合のよい方法を選ぶとよいでしょう。どちらの工法でもアスベストの対策をすることができ、優良な業者を選びさえすれば安全に施工してもらえるからです。
今回は、自宅のスレート屋根でのアスベストの使用有無を判断する方法や、カバー工法や屋根葺き替えでアスベスト対策をするときに知っておきたい情報について解説します。
健康被害をご心配の方も本記事をお読みいただければ、ご自身に合った方法がわかりますので安心して業者に依頼できるでしょう。
屋根を葺き替えるときアスベストが入っているとなぜ危険?
アスベストは人体への有害性が危険視され、現在では撤去が必要なものとして扱われています。そのため古いスレート屋根で暮らしている方はなるべく早めに業者に依頼して、屋根葺き替えなどでアスベスト除去をしてもらうのがよいでしょう。
ここでは、アスベストの危険性やアスベスト入りの屋根であるかを見分ける方法について解説していきます。
アスベスト入り屋根のリスクは基本的には撤去時のみ
アスベストとは、「石綿(いしわた)」ともよばれる鉱石のことをいいます。屋根の割れを防ぐために、1960~2004年ごろまでスレートタイプの屋根を中心に使われていました。しかし、アスベストは“繊維がとても細かい”という性質をもっており、それにより施工などの衝撃により飛散しやすい、という点が問題となったのです。
この飛散したアスベストの繊維が呼吸により人体に入ると、肺にとどまってしまうため肺がんや呼吸機能障害などの症状がでることがわかってきました。このように、確かにアスベストは人体に入ると健康被害のおそれがある危険なものなのです。
ただ基本的には屋根の施工時にセメントで固められているため、撤去時以外はそこまで大きな問題になることは少ないでしょう。しかしそれでも、屋根の葺き替えなどでアスベストを撤去することをおすすめします。
なぜなら、アスベストが使われている家は老朽化がかなり進んでいる可能性が高く、屋根トラブルが発生しやすい状態になっているからです。もし屋根の破損や雨漏りなどのトラブルに発展すると、そこからアスベストによる健康被害のリスクが上がるかもしれません。
アスベスト入りの屋根かどうかの見分け方
先ほどご紹介したとおり、アスベストはとても危険な素材で撤去が必要なものです。しかし、すべての屋根にアスベストが使われているわけではない点に注意しましょう。そのため、古い屋根だからアスベストが使われていると断定せず、見分け方を把握して調べてみることが大切です。そこで、アスベスト屋根の見分け方を以下でご紹介しましょう。
- スレート屋根やセメント瓦を2006年以前に設置していたか
2007年以降に設置されたスレートやセメント瓦であれば、アスベストが含まれていることはありません。施工時期を確認してみましょう。 - 築15年以上にも関わらず屋根の状態がよいか
スレートの場合、一般的に15~20年程度が寿命だとされ、15年を超えると通常はひび割れなどが発生してきます。一方でアスベストは耐久性が高いため、ひび割れなどの劣化が起きにくいのが特徴です。15年を過ぎたスレート屋根にひび割れなどが見られない場合、アスベストが含まれている可能性があります。 - 国土交通省の石綿データベースなどでの検索結果はどうか
国土交通省では、家に使われている建材にアスベストが含まれているかを確認するための「石綿(アスベスト)含有建材データベース」をWEB上に開設しています。
このサイトにアクセスして屋根材の商品名やメーカー名などを入力すると、その屋根材がアスベストを含んでいるかの詳細な情報を確認することが可能です。商品名などは、屋根の建築図面などで確認することができます。
1~3の順で、アスベスト入り屋根である可能性が高いのか探ってみましょう。また、自宅の屋根にアスベストが使われているかわからないという場合は、アスベストの調査が可能な業者に相談することをおすすめします。
葺き替えとカバー工法どちらにするべき?
屋根のリフォームには、葺き替えとカバー工法の2種類があります。どちらも優秀な業者に依頼すればアスベストの対策が可能です。しかし、どちらのリフォーム方法にもメリット・デメリットがあるため、両者を比較しながら慎重に検討するのが望ましいでしょう。
ここで、カバー工法や屋根の葺き替えによるアスベスト対策目的のリフォームのメリット・デメリットをご紹介していきます。
葺き替えのメリット・デメリット
屋根葺き替えのメリット・デメリット | |
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メリット | デメリット |
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屋根葺き替えの大きなメリットは、アスベストを除去できるため根本的な解決が可能になることです。さらに、屋根葺き替えは古い屋根をまったく新しい屋根に取り換えるため、屋根の寿命が延び、重量も変わりにくいので耐震性を維持することもできます。
ただし、カバー工法に比べてどうしても費用が高くなりがちなのが気になるところです。屋根葺き替えでアスベストを除去するために、100万円以上もの費用がかかることも珍しくありません。
カバー工法のメリット・デメリット
カバー工法のメリット・デメリット | |
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メリット | デメリット |
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「アスベスト撤去費用が高くて手が出せない……」と悩んでいる方にとって、カバー工法は魅力的でしょう。カバー工法は古い屋根に新しい屋根をかぶせておこなうリフォーム方法で、屋根葺き替えほど大きな作業ではないため、施工費用が安いです。さらに、古い屋根にほとんど施工を加えないためアスベスト除去費用がかかりません。
ただし、カバー工法は十数年先の再リフォームのことを考えると、あとで費用が高くついてしまう点にご注意ください。なぜなら、カバー工法を2度おこなうことは難しいからです。そうなると、つぎのリフォーム時に葺き替えが必要となり、屋根葺き替えによるアスベスト除去費やカバー工法に使った屋根の撤去費が追加でかかってしまうでしょう。
ライフプランに沿って工法を提案してくれる業者に相談しよう
ここまでご紹介したように、カバー工法や屋根葺き替えなどのアスベスト対策目的のリフォームは、それぞれ特徴が違います。そのため、これからどう生活していくか、2回目のリフォームはいつおこなうかなどのライフプランをしっかりと考えて慎重な判断をすることが大切です。
ここでは、その判断の参考のため、カバー工法と屋根葺き替えについてそれぞれ向いている人をご紹介していきます。
- リフォーム予算に余裕がない人
- 急ぎでリフォームが必要な人
- 断熱性や遮音性を高めたい人
- アスベストと無縁の暮らしをしたい人
- 十数年先のことを考えて生活設計をしたい人
- カバー工法ができない状態の人
また、カバー工法か屋根葺き替えかでアスベスト対策目的のリフォームをすべきか迷っている人は、業者に相談するのもひとつの手です。業者であれば、屋根の状態や要望を考慮して、最適な屋根リフォーム手段を提案してくれるでしょう。
屋根葺き替え等でアスベストを安全に撤去するための業者選び
屋根葺き替えでアスベストを除去してもらう場合、施工技術の高い業者であるかを検討時にしっかりと見定めておくことが大切です。施工技術や実績などがよい業者であれば、アスベストをしっかりと除去してもらえるでしょう。ここでは、安心して依頼できる屋根リフォーム業者選びについてご紹介します。
アスベスト撤去の資格をもっているか
屋根葺き替えによるアスベスト解体・撤去の作業には、「石綿作業主任者」という専門的な資格が必要です。そのため、アスベストを業者に依頼したい場合は業者に石綿作業主任者という資格をもっているか確認しておきましょう。資格があれば、アスベスト除去に関する知識をしっかりもっている業者であることがわかるので、安心して依頼ができます。
また、確認するには、インターネットを使い業者のサイトを調べるか、業者に電話をして直接話を聞くという方法があります。施工や葺き替え前の現地調査が始まる前の段階で、しっかりと確認しておきましょう。
屋根の状態をしっかり調査してくれるかどうか
屋根葺き替えでアスベストをしっかりと除去してくれる業者を選ぶためには、資格だけでなくその業者の技術の高さを見ておく必要があります。問い合わせやサイトの情報だけでは判断するのが難しいため、一度現地調査を依頼して見積りまで取ってもらうようにしてみてください。
そのとき、築年数だけで工事をすすめてくる業者ではなく、丁寧に時間をかけて現地調査をし、しっかりと調査結果を報告してくれる業者がよいでしょう。さらに、現場の写真などを見せて細かく報告してくれる業者であればベストです。
屋根工事の実績が多い業者を
最後に、その業者が過去にアスベストを施工したことがあるか、などの施工実績を調べることも大切。屋根葺き替えでのアスベスト除去が得意な業者であれば、その業者のブログや自社サイトで実績を紹介していることもあるでしょう。
業者の選び方をおさらいします。屋根葺き替えのアスベスト除去に最適な業者を選ぶには「専門資格」「現地調査の対応」「過去の施工実績」を考慮することが大切です。アスベストの除去はとても大変で大掛かりな作業となるので、慎重に業者を選ぶのがよいでしょう。
また、屋根の工事業者すべてがアスベストの除去工事をおこなっているわけではありません。そのためアスベスト除去のために屋根葺き替えをする場合、現地調査が始まる前にアスベストの除去をしてもらうことは可能なのか、相談するようにしてみてください。
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