毎年冬になると雪下ろしをしなくてはいけない、豪雪地域に引越したなどの理由で雪対策が必要な方にとって気になるのは、どのような対策があるのかということではないでしょうか。
雪防止策には、さまざまな種類があります。自分にとって最適な方法を取り入れるために、以下に詳しくご紹介します。
雪下ろしの方法と注意点
雪が多い地域にとって、雪下ろしは身近なものです。
雪下ろしをするタイミング、方法などにはいくつかのポイントがあります。この章では、雪下ろしの手順や、危険性について触れます。
こんなときは雪下ろしが必要
雪下ろしをする目安
住宅の築年数が古くなるほど、早めの雪下ろしが必要だと言われています。
また、積雪量で雪下ろしのタイミングを図る目安もありますが、建物のきしみがあったり、雨によって雪が重くなってしまう危険性があるときは、すぐに雪下ろしする必要があります。状況を見て判断することが大切です。
行う前のチェック項目
- 本当に雪下ろしが必要な状態か
- 複数人で作業を行えるか
- 気温は0℃以下か
- 万全な準備と装備があるか
雪下ろしの方法
▼必要なもの
スコップ、スノーダンプ、ラッセル、雪ぴ
▼方法・手順
1.足場の確保
はしごを固定し屋根に上るときは、1人での作業は厳禁です。足場を確保したら、雪下ろしに使う道具を手に取るようにします。
2.命綱を繋ぐ
屋根から落ちない長さに調節した命綱を、ハーネスと繋ぎます。
3.雪下ろしをする
全ての雪を下ろしてしまうと足場が滑ってしまうので、雪を残しながら作業します。
雪下ろし前の安全確保がとても重要です。雪下ろしの工程は、安全第一で行います。
危険が多い雪下ろし
滑りやすい屋根上での作業、勾配がある屋根でバランスを崩す、足場の範囲が狭くなる物置屋根での作業など、雪下ろしには危険が伴います。そのため落雪に巻き込まれる事故や、雪下ろし時の転倒事故が後をたちません。
危険が多い雪下ろしをできるだけ避けるためには、雪防止策をすることが大切です。
雪防止策1 雪止めを設置する
雪防止策のひとつとして、雪止めの活用があります。
雪止めは後付けもできるため、取り入れやすい対策と言えます。雪止めについて、以下に詳しく取り上げます。
雪止めの役割
屋根に積もった雪が落ちてこないようにする、というのが雪止めの大きな役割です。そのための金具のことを「雪止め」と言います。
雪止めの利用によって、事故や近隣とのトラブルを防ぐことができます。また、雪によって雨樋や屋根自体が損傷をうけないように守ってくれる役割もあります。
雪止めが必要な環境
豪雪地帯ではないが雪が降る地域
豪雪地帯では、雪止めが雪下ろし時に邪魔になったり、雪止めだけでは大量の雪に太刀打ちできないことが多いようです。降る雪は少しだけど、落雪が心配というときは雪止めが有効です。
落雪したときの危険性が高い
例えば、軒先の下にカーポートや車がある、人通りが多い道路があるというときは、落雪したときのリスクは計り知れません。
近隣の家との距離が近い場合も、トラブルを避けるために雪止めがあったほうが安心です。
雪止めの種類
雪止めの種類は、屋根の種類によって分けられます。
瓦の場合だと、雪止めが付いた瓦に交換するだけなので、比較的簡単な作業になると言われています。スレート屋根の場合は、スレート用の器具を取り付けることになります。このように雪止めの種類に応じて設置工法が異なります。
全ての屋根材に対応している雪止めがいい、という場合は雪止めネットの活用も有効です。
雪止めの取り付け位置
外壁の真上あたりがベストです。つまり、軒先から離れた場所です。目的は、軒先を守ることにあります。
軒先部分に雪を溜めてしまうと、重みで軒先が曲がってしまうことがあります。また、軒先で雪の水分が凍結を繰り返すと、屋根材を支える重要な部分が劣化してしまうのです。これらのリスクを避けるために、適切な位置に取り付けることで安心して雪止めを利用できます。
雪防止策2 無落雪屋根にする
雪が多く降る土地など、雪止めでは効果がないというときは無落雪屋根が役に立ちます。実際に、無落雪屋根は豪雪地帯で多く見られる屋根です。
無落雪屋根の種類やメリットを中心に、スノーダクト方式に起こりがちな「すが漏れ」について見ていきましょう。
無落雪屋根とは?
北海道などの豪雪地帯でよく見られる、雪下ろしが必要のない屋根です。
この屋根の開発前は、雪下ろしなどの作業による手間や危険性がつきまとっていましたが、その問題を解決したのが無落雪屋根です。
定期的なメンテナンスや雨漏りの危険がでてくるなどのデメリットもありますが、それ以上にメリットが大きいです。
無落雪屋根の種類
1.スノーダクト方式
真ん中が凹んだ屋根が特徴です。溶けた雪水は屋根の中央にある排水口に集まり、建物内にある排水管を通して流す仕組みになっています。
落雪のリスクを回避できるので、広く取り入れられている方式です。水を流す排水管が大きな役割を果たしているので、ゴミや飛来物の詰まりがないかなど定期的な点検が必要になります。
2.ルーフフラット方式
平らの屋根が特徴です。スノーダクト方式とは違って屋根には排水口はないので、風で雪を飛ばすような仕組みになっています。排水口を作らないので、初期費用を抑えることができるのがメリットです。メンテナンスも必要ないので手間がかかりません。しかし、雪庇や巻きだれが起こりやすいので注意が必要です。
雨漏り同様の被害をもたらす「すが漏れ」
「すが」は、東北地方の方言で氷という意味をもちます。すが漏れとは、氷が溶けて室内などに漏れてくることを言います。
すが漏れは、積もった雪や氷と屋根との間に挟まれた水が、行き場をなくすことが原因です。流れることのできない水が、屋根や壁の隙間、天井などから漏れ出てくるのが、すが漏れ被害です。
起こる仕組みは違えど、雨漏り同様の被害をもたらすので二次被害のリスクもあります。
積雪によるすが漏れと保険の適用
すが漏れは雪下ろしなどの対策を怠らなければ起きない、という考え方に基づいて保険の適用外だと言われています。しかし、これはほんの一例です。火災保険に付帯している雪災保証を適用するには、突発的な事故など、その原因の内容が重要です。
普段、雪が降らないような地域で突発的に大量の雪が降ったなどの非常事態であれば、保険会社が対応してくれる場合があります。
適用するかどうか不明なときは、保険内容の確認や保険会社への問い合わせで解決しましょう。
雪防止策3 屋根融雪システムを取り入れる
屋根融雪システムは電気やガスを使っているので、確実な雪防止策と言えます。
このシステムにはさまざまなタイプがあり、融雪に利用するものや屋根形状によって取り入れる機材が変わってきます。どのタイプが適しているか確認してみましょう。
屋根融雪システムの仕組み
屋根融雪システムは、屋根に積もった雪を熱や水によって溶かすシステムのことです。屋根に設置しているパイプやヒーターを使って雪を処理する仕組みになっています。こちらも、無落雪屋根同様に、豪雪地帯でよく見かける雪防止策です。
融雪システムに必要な熱を水を生み出す方法として以下の3つがあります。
- 地下水
- 電熱
- 灯油ボイラー・ガス
電熱方式の種類はさらに3つに分けられる
ルーフヒーター | 特徴 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
接着型 | 平屋根でよく利用されるもので、カラーが豊富。 剥離紙で接着するのが特徴 |
簡単に設置できる、防水性・耐候性がある | 金属屋根にしか対応できない |
マグネット型 | 磁性体の屋根で簡単に設置でき、カラーが豊富 | 防水性・耐候性がある、融雪効果が高い | 対応できる屋根が限られる |
寄棟(方形)屋根 | 一般的によく見られる屋根。 大棟があるのが寄棟、ないものを方形と言う。 屋根は4つの面で構成されている |
雨や雪を分散してくれる 重い屋根の場合、風の耐久性が高くなるので台風に強いと言われている |
初期費用のコストが高め 雨樋や棟が長い、やや複雑な構造のため雨漏りリスクが高い |
ⅡS型 (メッシュタイプ) |
屋根の上から後付けできるタイプ。 屋根に被せて利用するのが特徴 |
サビに強い、メンテナンスが楽 | 見た目が悪くなることがある |
屋根の形状や素材によって、使える電気ヒーターは変わります。
また、テフロンヒーターを取り扱っているなど、業者によって対応が違うことがあります。工事の前に、相場も含めて施工業者に相談してみましょう。
融雪システムの適切な設置場所
・屋根の全面
電気代が気になるところですが、屋根の面積をほぼカバーするので全体的に効率よく融雪することができます。
・軒先部分
落雪や、すが漏れ対策になります。部分設置なので融雪に時間はかかりますが、コストをおさえることができます。
・屋根谷部
雪が溜まりやすい谷部に設置します。一部のみの融雪なので豪雪地帯には不向きですが、コストをおさえて利用できます。
まとめ
- 大量に雪が積もると雪下ろしが必要だが、危険が伴い事故が後を絶たない
- 雪下ろしのリスクや雪による事故を回避するために、3つの対策がある
- 雪止めは比較的簡単に取り入れられ、とくに積雪量が少ない地域で有効
- 無落雪屋根は雪下ろしの手間がないので、豪雪地帯で重宝されている
- 屋根融雪システムは主に熱を使って融雪するので、確実な雪防止対策と言える
- 雪の被害による落雪だけでなく、すが漏れにも注意する
- すが漏れ被害に遭ったら保険の対象になることもあるので、要確認
屋根の雪防止策は、大きく3つに分けられます。
自身の住んでいる地域の気候や自宅屋根の素材などに合わせて、雪防止をしていきましょう。