現在は一般住宅でもあらゆる建築構造が採用されています。屋根材や屋根形状によって雨仕舞いや雨漏り対策、雨漏り修理方法が違うように建築構造によって雨漏りの原因や発生場所も変わってきます。
今ページでは建物構造と雨漏りの関係に注目し、現在国内で多くみられる鉄筋コンクリート造と木造住宅に分けて、それぞれの詳しい建築構造と雨漏りの関係についてご紹介します。ご自宅の住宅構造の弱点を知り、家づくりはもちろん、今後の雨漏り対策に活かしましょう。
建物構造と雨漏りの関係
建築構造と雨漏りの関係について解説します。
建物構造によって雨漏りの原因は違うのか
使用・採用されている建築部材や屋根材・屋根形状も異なるため建物構造によって雨漏りの原因箇所や発生箇所も違います。メリット・デメリットが違えば、雨水が留まる箇所や流れる場所も異なるからです。
たとえば木造住宅の瓦屋根と鉄筋コンクリート造の陸屋根では原因、発生場所、また対処法や修理方法も全く違うため、それぞれに適したメンテンスや対策が必要になります。
DIYで応急処置をほどこす際は自宅の建築構造、部材の種類とどういった補修工法が適切なのかをよく把握しておく必要があります。
雨漏りリスクが0%の建物構造は存在しない
建物構造や屋根形状、採用されている建築部材によって確かに雨漏りリスクの高い・低いはありますが、雨漏りリスクが0%の建物構造は存在しません。あらゆる側面から見ればどんな建物構造にもメリット・デメリットがあります。
いずれも自然災害によるき損、経年劣化は工夫を凝らしてリスクを軽減させていても避けられるものではありません。
大切なのは建物構造の弱点を知ったうえで適切なメンテナンスを行い、トラブルに備えて建物が本来持つべき機能を維持できるように努めることです。
鉄筋コンクリート造
RC造と略されます。主にマンションやビル、アパートなどの集合住宅でみられますが、近年では戸建住宅でも採用されています。
建物構造・屋根形状
建物構造
柱や梁の構造部分に鉄筋を採用しコンクリートを打ち込んだものを指します。鉄骨には圧縮に弱く、引っ張りには強いという特徴があり、コンクリートには圧縮に強く、引っ張りには弱いという特徴があるため、互いの弱点を埋め合う合理的な建築構造です。
さらに鉄鋼の火に弱く、サビが発生しやすいという弱点もコンクリートで覆うことによりカバーすることができます。
屋根構造
戸建住宅では勾配屋根(斜傾のついた屋根)も時折みかけますが、マンションやビルも含めて多くは陸屋根・屋上屋根が採用されています。
メリット・デメリット
- 断熱性が高い
- 気密性が高い
- 防火性能が期待できる
- 遮音性が高い
- 建築費用がかかる
- 住宅重量が大きい
- 通気性が低い
雨漏りする主な原因
- 施工不良
- コンクリートの経年劣化による隙間やヒビ
- 防水工事・メンテナンス不足
- (陸屋根・屋上屋根を採用している建物に限り)防水層の劣化
もっと詳しく知りたい!
鉄筋コンクリート造が雨漏りする原因でよくあるのは防水工事の施工不良と経年劣化です。コンクリートは確かに木材に比べて耐久性に優れ長持ちすると言われていますが、劣化や震災などでクラック(ひび割れ・亀裂)も生じます。
陸屋根や屋上屋根の場合は勾配屋根とは違って雨水を流すことができず、雨水が屋根に留まってしまいます。防水塗料でしっかり膜を張る必要があります。防水工事がしっかり行われていないと、木造よりも雨漏りリスクが高いと言われています。
また、外壁からの雨漏りの原因の多くが施工不良です。納期で急かされる工務店や業者が、コンクリートが完全に固まりきらないうちに上部を重ねていくことも多く、下部が自重に耐えられずクラックが生じやすいと言われています。
雨漏りした際の対処法
陸屋根・屋上屋根、ベランダのコンクリートのクラック(ヒビ割れ・亀裂)をコーキングで補修し、劣化がひどいようなら防水塗装・防水工事を行います。コーキング補修で済む程度であればDIYも可能ですが、防水工事であれば業者にまかせましょう。
木造
現在でも根強い支持を集める木造は日本の伝統的な建築構造です。和風はもちろん、洋風の住宅デザインでも合います。
建物構造・屋根形状
・建物構造
骨組みが木材で作られている建物を指します。現在、国内で最もみられる建物構造です。木材は通気性・断熱性に優れ、日本の四季に最も適した建築材料と言われています。現在木造建築は【在来工法】と呼ばれる伝統的な工法と、海外建築文化から取り入れた【2×4工法】が主流です。
・屋根形状
ほとんどの場合、傾斜のある屋根が採用されています。
- 通気性が高い
- 鉄筋コンクリート造と比べて建築費用が抑えられる
- リフォームや建替がしやすい
- デザインの自由度が高い
- 地震の揺れに弱い
- 木材のためシロアリなどの害虫被害に遭いやすい
雨漏りする主な原因
- 屋根のき損やトラブル
- 自然災害による住宅部材のき損
- 経年劣化
- 施工不良
もっと詳しく知りたい!
木造建築の雨漏り原因で最も多いのは経年劣化です。木造建築物は年数が経過すると全体の劣化が進むため、原因箇所は屋根のトラブルがほとんどというわけではありません。外壁やサッシ周り、窓枠からの雨漏りも多いと言われています。また、ご存知の通り木材は雨や湿気に弱く腐食しやすく、鉄筋コンクリート造の雨漏りに比べ二次被害・三次被害の広がりが急激です。
天井のカビやシミもさることながら、最もおそろしい二次被害はやはりシロアリの食害に遭うことでしょう。腐食して柔らかくなった木材はシロアリの好物です。骨組みや基礎部分をかじられてしまえば、建物倒壊や生活する人の命の危険さえあります。
揺れや火、風などにも弱いため自然災害による建築部材のき損も多いです。温かみがあり過ごしやすい木造建築ですが弱点は多いため、外壁塗装などのメンテナンスや補修をしっかり行う必要があります。
雨漏りした際の対処法
屋根のき損であれば、屋根材に適した修理・リフォームを行う必要があります。小さな瑕疵であれば二次被害に進む前に応急処置をほどこしましょう。経年劣化や自然災害が原因の場合は建て直しや、大掛かりなリフォームを迫られることも少なくありません。
木造に屋上屋根・陸屋根がない理由
これまでめったにみられなかった木造住宅の陸屋根も増えてきたようです。注文住宅以外の建売住宅でも見かけるようになりました。
モダンな雰囲気とおしゃれな佇まいに魅力的を感じる方も多いでしょう。しかし多くの建築の専門家たちは木造住宅の陸屋根を推奨しません。
木造のデメリット欄でもあげた通り、木造は揺れに弱いため陸屋根にほどこす防水膜を壊してしまう可能性が高いからです。
雨漏りリスクが高い住宅は当然、寿命も短いと考えます。木造住宅と陸屋根は整合性が低く、雨漏りリスクの側面から限定すればあまりおすすめできない構造と言えます。
まとめ
建築構造によって雨漏りの原因や発生箇所も変わってくることがわかりました。ポイントは以下の通りです。
- 建築構造により使用できる部材、採用できる屋根形状や屋根材も違うため雨漏り対策も変わる
- 鉄筋コンクリート造はコンクリートのクラックに注意!
- 木造住宅は耐久性が低いのでこまめなメンテンスを必要とする
- それぞれの弱点をよく把握したうえで雨漏り対策に努める
雨漏り修理や対策は簡単に行えるものではありませんので業者さんと相談しながらすすめるのがおすすめです。