屋上防水工事費用は修繕費として計上できる場合が多いです。
修繕費は原状回復や建物の維持管理のためにかかった費用のことを指します。よって、建物をよい状態で維持するためにおこなう屋上防水工事費用は修繕費として見なされることが多いのです。
しかし、規模の大きな工事や耐久性の高い素材を使って新たに施工した場合などは、建物の価値を向上させるものであるとして「資本的支出」と見なされる場合もあります。当記事では「修繕費」と「資本的支出」の違いや内容について詳しく解説しますのでぜひ参考にしてください。
修繕費と資本的支出の違いを理解しよう
まずは修繕費と資本的支出の違いをしっかりと理解しましょう。
〇修繕費
修繕費とは、建物などの維持管理や修理のために必要な最低限の工事にかかった費用のことです。マイナスをゼロにすることとイメージするとわかりやすいでしょう。
〇資本的支出
資本的支出とは、建物などの維持管理や修理に必要な最低限の工事に加えて、耐久性の向上や美観向上などグレードアップのための工事をおこなった場合にかかった費用のことです。マイナスをプラスにすることとイメージするとわかりやすいでしょう。
さらに上記の2つは、費用を計上するさいの処理期間が異なります。詳しくは以下で解説しますので参考にしてください。
修繕費と資本的支出は経費計上の期間が異なる
屋上防水工事費用を修繕費として見なすか、基本的支出として見なすかによって、費用計上をする期間が異なります。先述したそれぞれの違いと合わせて知っておきましょう。
▽修繕費の場合
修繕費の場合はその年に全額をまとめて計上します。
▽基本的支出の場合
資本的支出の場合は、耐用年数に応じて減価償却しなければなりません。減価償却とは費用を何年かにわけて計上することです。たとえば、施工してもらった屋上防水の耐用年数が15年であった場合、工事をした日から15年間毎年計上を続ける必要があります。
屋上防水工事費用は修繕費として見なされることが多い
最初にご紹介したように、屋上防水工事費用は修繕費として見なされることが多いです。屋上防水工事は「雨漏りで劣化した屋上を元の状態に戻すためにおこなうもの」もしくは「建物の維持管理に必要なもの」であり、修繕費の概念に当てはまるとされるためです。また、屋上防水工事以外に、以下のようなことにかかった費用も修繕費として見なされます。
- 割れたガラスの取り換えや修理
- クロス張り替えなどの原状回復工事
- 冷暖房設備の部品の修理
- 同じ家具家電への交換工事
など
さらに、修繕費として認められるためには以下のような条件もあります。どれかひとつ満たしていれば修繕費と認められるので、判断に迷ったときは参考にしてください。
修繕費として見なされるためにはこんな条件も!
「この工事が修繕費に当てはまるのかわからない……」という場合は、以下の条件をひとつでも満たしているか確認してみましょう。この条件は国税庁が定めている「形式基準」とよばれるものです。
- 費用が20万円未満
- 工事周期が3年以内
- 費用が60万円未満
- 取得価額が前回の決算時の10%以下
取得価額とは、その建物を購入したさいの本体価格に、不動産購入に必要な法人税や所得税などの費用を加えたものです。この取得価額が前回の決算時の10%以下であれば修繕費として認められます。
屋上防水工事費用が資本的支出にあたるケース
ここまで屋上防水工事の費用は基本的に修繕費として見なされるとお伝えしましたが、場合によっては資本的支出と見なされるケースもあります。それは以下のようなケースです。
- 大規模な工事(原状回復以上の工事)
- 美観をアップさせる防水美装
- 耐用年数の長い素材を使った工事
など
たとえば、それまで採用していたウレタン防水から耐用年数の長いアスファルト防水に切り替えた場合などがあります。この場合、耐久性の向上によって資産価値が上がったと考えられるため、資本的支出に分類されることになるでしょう。また、屋上防水工事以外では、以下のような工事も資本的支出にあたると見なされることが多いです。
- 非常階段の取り付け工事
- モルタル塗装からタイル張りへの交換工事
- グレードの高い壁紙への張り替え工事
- 最新式の家具家電への交換工事
など
このように、維持管理や原状回復に必要な最低限の工事に加えて、付加価値を加えるような工事をおこなった場合は、資本的支出にあたるとされています。しかし、実際にどちらに該当するかの判断は非常に難しいため、迷ったときは管轄の税務署や税理士さんに相談してみるのがよいでしょう。
まとめ
基本的に屋上防水工事費用は修繕費と認められやすいですが、場合によっては資本的支出と見なされてしまうこともあります。屋上防水工事費用を修繕費として認めてもらうためには、維持管理や原状回復に必要な最低限の工事にとどめておくことが大切です。
たとえば以前よりも耐久性のある素材を使った場合、建物の耐久性や価値が高まり資産価値が上がったと見なされ、資本的支出に分類されてしまいます。資本的支出と見なされると減価償却をしなければならないため、節税したい方はどのようなことが修繕費に該当するのかしっかり理解しておきましょう。
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